點字毎日


點字毎日

共生の懸け橋約1世紀 視覚障害者と社會を結ぶ

毎日新聞社が発行する週刊點字新聞「點字毎日」は、発刊以來、視覚障害者の福祉、教育、文化の向上に寄與するとともに、社會とをつなぐ懸け橋としての役割も擔い続け、多くの読者に親しまれてきている。約1世紀の長期にわたって點字新聞を発行し続けている新聞社は、毎日新聞社が國內唯一で、世界的にも例がない。

創刊は大正時代

點字毎日は、毎日新聞本紙を點字化したものではなく、視覚障害者に関連のある福祉、教育、文化、生活などさまざまな分野のニュースを獨自に取材?編集し、発行している。

創刊は1922(大正11)年。創刊號では初代編集長、中村京太郎(全盲)が「発刊の目的は、失明者に対して自ら読み得る新聞を提供し、本社発行の各種の新聞とあいまちて、新聞の文化的使命を徹底せしめんとするにほかありません。かくして、一方には盲人に対し、一個の獨立せる市民として社會に活動するに必要な知識と勇気と慰安とを與え、他方には、これまで盲人に対して眠れる社會の良心を呼び覚まさんとするにあります」と、その理念を格調高くうたい上げている。

創刊號
點字毎日の創刊號

損得を度外視

點字新聞の創刊が提案された當初、社內では「そんなもうからんもん、あかん」と反対の聲が強く、一蹴(いっしゅう)されそうになった。當時は、點字を読める視覚障害者はまだわずかで、まったく収益は見込めない。また、福祉という概念も確立しておらず、情報媒體としてのラジオもない時代。視覚障害者が社會の動きを知るには、身近な目の見える人に新聞を読み聞かせてもらうくらいしかなかった。そうしたなか、大阪毎日新聞社(當時)社長、本山彥一の「これはいい案だ。ぜひやろう。損得など問題ではない」の一言で実現する。

だが、點字新聞の収益性への不安、事業継続の困難さを指摘する聲は、社外にもあった。記録によれば、創刊號に快く祝辭を寄せた當時の首相、高橋是清も「盲人の新聞を発行しても300(部)出たらいい方だろう」と語ったという。

點字普及に貢獻

良くも悪くも社內外の注目を集め、発刊に向けアメリカから輸入した最新の點字印刷機の不調にも悩まされながら、創刊號は800部を発行し、スタートした。同時に、全國的な點字の普及にも取り組み、點字毎日は視覚障害者が自ら読むことのできる新聞として受け入れられ、部數は徐々に伸びていった。

一方、発刊を機に、點字毎日は點字普及のほか盲學校用點字教科書の発行、視覚障害者の點字投票実現に向けたキャンペーンなども展開。點字投票は25年に公布された普通選挙法で世界で初めて認められ、その後の點字の市民権拡大に大きくつながっていった。また、盲學校の生徒たちが、自らの思いや生き様を訴える全國盲學校雄弁大會などの事業も創設し、視覚障害者と社會とを結ぶ懸け橋としての役割も擔ってきた。

菊池寛賞を受賞

こうした長年の活動が評価され63年、日本文學振興會から「菊池寛賞」を受賞。これを記念して、視覚障害者の文化、福祉、教育に貢獻した人たちを顕彰する「點字毎日文化賞」を創設した。

また、68年には朝日新聞社から「朝日賞」(後の朝日社會福祉賞)を受賞。記念事業として、ハンセン病で失明し、點字を觸読するための指先の感覚を失った人たちへ、記事內容をカセットテープに収録した「聲の點字毎日」を無償提供(現在は毎日新聞社會事業団との共同事業としてデイジー版CDを寄贈)している。

さらに、2018年には、公益社団法人?日本記者クラブから日本記者クラブ賞特別賞を贈られた。授賞理由に「視覚障害者にとって長く貴重な情報源となってきた。収益性よりも社會的弱者への貢獻を優先した100年近い歩みは敬服に値する。ジャーナリズムの使命の広がりについても考えさせてくれた」とある。

ヘレンケラー
點字毎日の印刷室を訪れたヘレン?ケラー(左)=1955年

両陛下が視察

一方、55年に毎日新聞社の招きで3度目の來日を果たしたヘレン?ケラーが點字毎日の編集室や印刷室を視察した。印刷室では、點字製版機を觸りながら「こんな立派な機械でできるとは夢にも思わなかった」と、感想を述べている。

さらに、99年には當時の天皇、皇后両陛下(現在の上皇、上皇后両陛下)が點字毎日の編集?印刷室を視察された。皇后陛下は點訳を學ばれた経験があり、以前から點字毎日に関心を寄せておられた。両陛下は、編集から印刷までの制作工程を予定時間を超えるほど熱心に見入り、「これからも良い仕事をなさってください」というお言葉が寄せられた。

そして現在。創刊當時に比べ、社會情勢、情報媒體の発達など、環境は大きく変化してきた。特に、障害者福祉施策はいま変革期にあり、教育面でも特殊教育から特別支援教育へと制度を変えている。そうしたなか、點字毎日は新たな事業展開、媒體の拡充などを行いながら、創刊の理念や志をいまも脈々と受け継いでいる。情報障害者でもある視覚障害者へ獨自の視點から関連する福祉、教育、生活などあらゆる分野の情勢の変化を伝える一方、當事者の聲を社會へ屆け、より良い共生社會の構築に寄與し続け、「新聞」の原點を大切にして、読者とともに未來へ向かっている。

天皇皇后
點字タイプライター(下)で打ち出した歓迎の言葉をご覧になる天皇、皇后両陛下=大阪市北區の毎日新聞大阪本社點字毎日部編集室で99年11月17日

弁論大會

1928(昭和3)年から続く全國盲學校雄弁大會は、全國盲學校弁論大會と名稱を変えて、毎年秋に全國大會を開催。2002年から日本公文教育研究會、03年からは住友グループ広報委員會の特別協賛を得て、入賞弁論集の作製?寄贈などをしている。

 

活字、音聲版も

発行媒體は従來の點字版に加えて、98年から「點字毎日活字版」を創刊。點字のデータを活字に置き換え編集し直して、點字を読めない弱視者や目の見える人たちにも視覚障害に関する情報を共有することに役立てている。このほか、毎日新聞社発行の月刊「Newsがわかる」の中から、一般向けの解説記事を點字化した「Newsがわかる點字版」(03年創刊)▽「點字毎日」と「Newsがわかる」の點字データをインターネットで自宅へ配信し、専用の觸読端末(ケージーエス社製)で読める「電子新聞」(同)▽2週分の「點字毎日」を世界規格デイジー形式でCDに収録した「點字毎日音聲版」(05年創刊)などの発行も行っている。

出版物
點字毎日の出版物

各種點字刊行物

點字毎日は創刊以來、毎日新聞大阪本社を拠點に発行している。

「點字毎日」は、毎週日曜付。A4判60ページ。1年2萬円、半年1萬円(非課稅、送料無料)。地域によって購読費助成制度実施自治體もある。「點字毎日活字版」は、點字毎日の記事から編集。毎週木曜付。タブロイド判12ページ。1年1萬3,094円、半年6,547円(送料込み)。 このほか多數の點字書籍も刊行。各種點字印刷物の受託、點字名刺などの問い合わせは點字毎日(06-6346-8388)へ。

點字毎日の年表
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